前回のコラムで『自分で勝手に英語を話せないと思い込んでいる』ことが英語を勉強している人の盲点である、ということをお話しました。
もちろん、今すぐ英語を話せるということはないかもしれませんが、殆どの人が自分の実力を過小評価していると思います。実際には、自分が思っている以上に話せるはずです。
私は数年前、初めて海外旅行に行ったとき、このことを実感しました。今日のコラムではその体験をお話しようと思います。
そのときはメキシコへ行きました。(一人旅です。)直行便ではなかったので、途中サンフランシスコで乗り継ぎをしましたが、当時、全く英語がダメだった私は飛行機に乗る初めての体験ということもあり、手続きのとき、相手の言っていることは何もわかりませんでした。
ところが、帰国するときにやはりサンフランシスコで乗り継ぎをしたときには、スムーズに手続きをすることが出来ました。
セキュリティチェックでブザーがなってしまったのですが、そこでも「ポケットにコインを入れているから、多分そのせいだよ。ちょっと取り出すから待ってて」みたいなことを、係員の人に英語で話していました。
今思い出しても、当時こんなことをキレイに言えるだけの知識は持っていなかったので、自分の知っている単語を適当に並べただけだと思いますが、相手に通じましたし、自分ではネイティブ並に喋っている感覚でした。それだけ、違和感なく英語を口にしていました。
行き帰りでの、この違いは何でしょう?
決して、旅行のあいだに英語の力が伸びたわけではありません。理由はただ一つ、自分が英語を話せるかどうか、なんて悩みが頭のなかからキレイさっぱりなくなっていたからです。
メキシコではスペイン語が公用語です。英語は全く通じません。ガイドブックを片手になんとかスペイン語で乗り切っていたのですが、ある町で船に乗ろうとしたとき、トラブルがおきました。
普通に「チケットください」だけではダメらしく、色々質問をされました。もちろんスペイン語なのでさっぱりです。本当に何もわからず、どうしようもなく途方にくれていました。そのとき、同じ船に乗る人から声をかけられました。
「Do you speak English?」
英語で話かけられたのですが、そのとき私は英語という意識はなく、単純に「コトバがわかる!」とだけ感じていました。その人に通訳をしてもらって、無事その船に乗ることができました。(その船はフェリーだったので、車で来ているのか聞かれているだけでした。)
船に乗り込んだあと、その人も一人だったので、2人で色々と話をしました。そのとき、私は会話らしい会話をしたのが4週間ぶりだったので、人と話すことに飢えていたこともあり、数時間話をしていました。
これだけ英語で会話をしたのは、そのときが初めてでした。話が通じることにこれだけ感激したことは後にも先にもありません。話が出来ることのありがたみを満喫しました。
面白いのは、この直前まで全く英語は話せないと自分で思っていたということ、そして実際に話すことが出来なかったということです。でも、このときは普通に英語で会話をしていました。
この経験をきっかけに、私は自分が思っている以上に英語を話す力があるんだなと思えるようになりました。それが帰りの空港での態度にも表れています。
この不思議な体験を私は英語の学習に役立たせています。英語が話せないなあと自信をなくしたとき、他の外国語で話してみます。例えば、スペイン語の辞書を片手に自己紹介にトライします。とはいっても全然できません。5分もすれば、フラストレーションがたまりまくります。
そのあとに英語で自己紹介をしてみます。なんてことはありません。調子にのって次から次へと口からコトバが出てきます。英語を話していることに快感さえ覚えます。そして、いつの間にか「英語が話せるっていいなあ」ぐらいの気持になっています。
「英語が話せるようにならないよ。ダメだなあ・・」から「英語が話せるっていいなあ」まで僅か数分です。お手軽です。しかも、英語が出来ると自信を持って勉強をすれば、どんどん頭に入ってきますので、ますます自信もついて、それがさらに能率をアップさせて、という好循環です。
もし、自信をなくしたときには、またスペイン語のお世話になればいいだけです。
「私は英語を話せない」と思っている人には、一度この方法を試してみることをオススメします。本屋に行けば数ヶ国語が載っている旅行用の会話集が1000円ぐらいで売っています。それを1冊だけ買って、英語以外の言葉で話してみてください。
会話集をみなければ、さっぱり話せないでしょう。でも、同じことを英語でトライしてみると、本なんかみなくても普通に話が出来ることに気づくはずです。
これって、どんな人でも体験できます。実はこの方法は以前、私が家庭教師のアルバイトをしていたときに、英語が出来ないと悩んでいた中学生の女の子と冗談半分で試したところ、その子が自信をつけるきっかけともなりましたので、効果は実証済みです。遊び半分であなたも試してみては?
語学だけに限らず、自己評価はその人の上達度を左右します。出来ないと思いながらでは、せっかく勉強してもたいして身になりません。うぬぼれでもホラでもいいから、自分は出来ると思ってしまいましょう。そのほうが楽しいですしね。