その日、私は南カリフォルニアの小さな町にいました。人口は僅か数千人の本当に小さな町です。なんにもありません。一つの立派な建物を除いては・・・・

 

その建物は地方裁判所、私の目的地でした。数ヶ月前、私はFreewayで60kmオーバーのスピード違反でつかまりました。アメリカでスピード違反といえば、普通は罰金を払って終わりなのですが、私の場合はさすがにスピードを出しすぎというわけで裁判所への出頭命令がきました。

 

今回はその体験記です。

 

私がアメリカらしいなあと感じたのは受け付けで順番待ちをしているとき、通訳サービスが必要かどうか訪ね歩いていることでした。移民が多いアメリカならではの光景です。

 

裁判所がこんなサービスをするなんてさすがだなと思っていたら、民間業者から自ら売りこみにきているとのことでした。でも、裁判所で営業とはアメリカ人はタフですね。ちなみにサービスに日本語はありませんでした。

 

いよいよ手続きが始まります。裁判室にその日出頭した人物が全員集められます。多分100人ぐらいだったと思いますが、そのなかから一人ずつ前によばれます。

 

よばれた人間は被告台に上がります。まずは裁判官の質問に偽り無く答えることを宣誓します。映画でよくある「nothing but the truth~」とかいう文句です。まさか、実際に聞くことになるとは思いませんでした。しかも自分も言うのですから・・

 

宣誓が終わると裁判官が違反の理由と罰金額を言い渡されます。ここで不服がなければ終わりです。すごく簡単ですが、この言い渡しがちょっとしたイベントと化していました。

 

まずは待っている違反者の反応です。罰金が高額だったりすると部屋が沸きかえります。拍手をする人もいます。言われた本人も手を上げてそれに応えます。まるで表彰式です。

 

また、罰金額があまりにも大きい場合には今度は同情のためいきがもれます。ちなみにこの日の最高額は無免許運転でつかまった人の$1000でした。

 

裁判官も日本と違い、人間味があります。先ほどの話にあった拍手があがるようなケースでは一緒に笑いながら拍手をしていたりしますし、「conguratulation」とさえ言ったりします。こんなことをしていいのかというぐらいのパフォーマンスです。

 

また、罰金額が高額で相手が不満そうな表情を見せたときには、すかさず「ごめんなさい。でも法律だから仕方がないのよ。我慢してね」というようなコトバをかけます。しかも本当に気の毒そうな表情をみせます。

 

これでは言われた相手も納得せざるをえません。もしかしたら、こういうのは円滑に進めるためのテクニックかもしれませんね。自己主張が強い国ならではの光景かもしれません。

 

ちなみに私は「この日、スピード違反の最高記録!」と言われました。拍手を受けたのは言うまでもありません。(笑)罰金は約4万円。

 

私は日本でも1度40kmオーバーのスピード違反で、罰金を払ったことがあるのですが、そのときは8万円でしたから、アメリカのほうが安いですね。なんでもアメリカは安いのだなと妙に納得してしまいました。

 

もうひとつ、妙に新鮮だったのは罰金の支払いは現金でなければダメということ。カード社会のアメリカでもこういうのは現金なのかと不思議な気持ちでした。