私はよく言えばおおらか、悪く言えば緊張感のかけらもない人間なので、アメリカ留学中にも、普通であれば考えられないような失敗を繰り返しています。そのなかでも、私が唯一本気で焦ったのがこの失敗談です。

 

そのとき、私は大学院に留学する準備として、語学学校に通っていました。表向き、少しでも早くアメリカの生活に慣れるためと言っていましたが、本音を言えば、大学院での厳しい勉強の毎日を過ごす前に、アメリカで遊んでおこうという魂胆でした。

 

こんな考えなので、すっかりバカンス気分です。最初こそ、初めての外国暮らしに緊張していましたが、それも数週間すると慣れ、すっかりだらけきっていました。

 

そんなある日、部屋でくつろいでいた私は、宿題でもするかとカバンを漁り始めたのですが、そこでふと財布がないことに気づきました。

 

『どこにおいたんだろう?』

 

しばらく探しましたが、どこにも見当たりません。ここで初めて、私は無くしたのではと思い、その瞬間一気に青ざめました・・・

 

それも当然です。財布の中には現金・トラベラーズチェック・クレジットカードに加えて、パスポートまで入れておいたのですから。お金もなければ、身分証明書もない状態です。しかも、自分がいる場所は身寄りが誰もいない外国。

 

これでは、焦らないほうがどうかしています。『どうしよう?』

 

しばらく呆然としていましたが、結局無くした以上、することは一つです。まず、カードの利用を停止して、大使館に行ってパスポートの再発行手続きをします。

 

一番、困ったのが現金でしたが、幸いなことに私はcitibankの口座で用を済ませようとしていました。ご存知の方も多いかもしれませんが、citibankは一つの口座を世界共通で使えるので、例えば日本で口座を開いておいて、そこに入金して、アメリカのATMで出金するなんてこともOKです。

 

私の場合、日本の支店に口座を用意しておいたので、すぐに家族に頼んで全額日本で出金してもらい、新たにアメリカに開設した銀行口座に振り込んでもらうことが出来ました。

 

手続きに一週間ぐらいかかり、そのあいだは冷や汗ものでしたが、何とか無事終えました。でも、本当にこのときだけはぞっとしました。

 

外国にいるんだから、キチンと注意をしながら生活しなければいけないと、心から実感しました。この経験があって、このあとは留学中何のトラブルもなかったので、今考えてみるといい経験だったと思っています。

 

ちなみに、この話には後日談があって、全ての手続きが完了して、元通りの生活になった頃、財布が見つかりました。どうやら、地元の図書館に置き忘れていたようです。

 

当時通っていた語学学校のビザがあったので、そこから連絡してくれたのですが、どうせなら、もっと早く連絡してほしかったです。このあと、この話が学校中に流れて、その学校を去るまで、私はパスポートボーイと呼ばれ続けました。いい思い出といえば、いい思い出ですが、みなさんはこんなバカなことをしないようにしてください。

 

それから、citibankのカードって、実際何かと便利でした。海外に行く予定がある人は作成しておいて損はないと思います。(海外旅行保険などもついていて、便利です。)