英語を勉強する理由として、映画を字幕なしで理解出来るようになりたいと考えている人は多いと思います。私もその1人です。
ところが、なかなか聴き取れるようにはなりません。TOEICで高スコアをとれるようになった。ネイティブと会話をすることにも慣れた。ニュースぐらいであれば、聴き取れるようになった。
でも、映画を聴き取ることは出来ず、がっかりという体験をしている方は多いと思います。そのことに悲観してしまう人もいます。自分の英語はまだまだなんだと・・・
そんなことはないんですよ、というのが今日のコラムです。
最初に結論を言うと、映画の聴き取りというのは、英語のなかで、一番難易度が高いものです。映画の聴き取りに比べれば、日常生活やビジネスシーンで実際に英語を使うほうが遥かに楽です。
私自身がいい例です。
私はネイティブと面と向かって話をするのであれば、日常会話でもビジネス会話でも大丈夫ですし、ネイティブ数人に交じって、ディスカッションをすることも出来ます。大勢の前でスピーチをすることも、それほど苦ではありません。
でも、映画を完全に聴き取ることが出来ません。映画によっては、一度見ただけでは全然分からないということもあります。
これには、キチンとした理由があります。
みなさん、ご存知かと思いますが、コミュニケーションのなかでコトバが占める割合は、ほんの僅かです。実際には、声の調子や動作といったボディーランゲージが重要な要素となってきます。
実際の会話であれば、話相手はあなたに対して、言葉と一緒にこの無言のメッセージを送ってきます。意識はしていませんが、私達はそのメッセージを活用して、相手のコトバを理解しています。
誰でもそうですが、特に英語力自体が低い私達英語学習者にとっては、コトバの以外の部分に頼る要素が強いものです。
話相手も私達と意思の疎通を図ることを目的にコトバを口にしているのですから、あらゆる手段を使って、自分の意思を理解させようとします。声のトーンを変えたり、身振り手振りを交えたり、もっと単純に話すスピードを落としたり、分かりやすいコトバを使ったりという配慮をします。
ところが、映画のセリフというのはそういった配慮はありません。観客に伝わるように工夫することはありますが、その観客として想定しているのは、ハリウッド映画で言えば、アメリカ人です。
つまり、アメリカ人が観て、理解出来るぐらいの配慮しかされていないということですが、それぐらいでは、日本人には不十分です。これだけでも、実際の会話より映画のほうが難易度が高いということが分かると思います。
更に、コトバには、その人の考え方が反映されるものですから、その考え方が理解出来なければ、コトバを聴き取っても、意味が分からないということになります。
ジョークが例としては一番分かりやすいと思いますが、完璧にコトバを聴き取ったとしても、何が面白いのか分からないということがありますよね。それは、ジョークを口にした人の考え方が、あなたに理解出来るものではないからです。
既にお分かりでしょうが、ハリウッド映画であれば、アメリカ人の考え方が反映されていますから、それを日本人が理解するのは並大抵のことではありません。
こういったことをまとめて考えてみれば、映画が聴き取れないというのは、ある意味当たり前です。努力を続けていれば、聴き取れるようになると思いますが、その頃には、かなりの上級者になっているでしょう。
ですから、映画が聴き取れないから、英語力がないということにはなりません。ある程度、聴き取れる能力があれば会話能力はかなりのレベルにあるとも考えられます。
ネイティブと話をしてみたら、思った以上に話が出来るので驚いた!というようなこともありえます。
『映画を聴き取ることが出来ない=英語が出来ない』
こんな図式は当てはまらないということです。
映画を理解できなくても当たり前、70%ぐらい把握できれば完璧というぐらいに考えるのがベストだと思います。映画をリスニングの学習に取り入れている人はこれぐらいの感覚で取り組まれると、楽しみながら続けられると思います。
最後に、映画を聴き取れるようになるには、彼らの文化や考え方も勉強する必要があります。どんな手段がいいのか、すぐには思いつきませんが、スクリーンプレイはいいかもしれません。スクリプトと一緒に、何でこんなセリフを口にしたのか?という解説もついていますので、参考になると思います。